クラブヘッドの「重心距離」がショットに与える影響
重心距離というのはフェース上の重心(芯)とシャフトの中心線の延長線との距離のことです。
現在市場に出回っているほとんどのドライバーの重心距離は32mm〜45mmの間に分布しており、その平均値は38.6mmです。これが35mm以下だと重心距離が短いドライバー、40mm以上だと重心距離が長いドライバーとされています。
<ドライバーの重心距離>平均 38mm前後
35mm以下 : 重心距離が短い
40mm以上 : 重心距離が長い
そして重心距離がショットに与える影響は大きく3つあります。
【重心距離の影響1】 つかまりの良さ
重心距離が長くなるほど、ネック軸周り慣性モーメントは大きくなります。ネック軸周り慣性モーメントが大きくなるとフェースは回転しづらくなりますから、重心距離が長ければ長いほどフェースが返りにくく、つかまりにくいクラブということになり、逆に重心距離が短ければ短いほどフェースが返りやすく、つかまりやすいクラブだと言えます。
<重心距離とフェースの返りやすさ>
長い:フェースが返りにくく、つかまりにくい
短い:フェースが返りやすく、つかまりやすい
この為、スライスに悩むプレーヤーはなるべく重心距離の短いドライバーを使うことでスライスを軽減できますし、フックに悩むプレーヤーはなるべく重心距離の長いドライバーを使うことでフックを軽減できるのです。
【重心距離の影響2】 スイングリズム
上の【影響1】でも述べましたが、重心距離が長いほどフェースが返りにくく、短いほど返りやすくなります。これは言い換えると、重心距離が長いほどフェースがゆっくり返り、短いほどフェースが早く返るということです。
フェースの返る速度というのはスイングリズムに大きな影響を与えます。
例えば、重心距離が長くフェースがゆっくり返るドライバーならばゆっくりしたリズムで振るタイプの人が適していますし、重心距離が短くフェースが早く返るドライバーならば早いリズムで振るタイプの人が適しています。
これが合っていないと球が暴れる原因になります。
例えば、早いリズムで振る人が重心距離の長いドライバーを使うとフェースが返り切る前にインパクトを迎え、右へのプッシュアウトやスライスの原因となります。逆に、ゆっくりしたリズムで振る人が重心距離の短いドライバーを使うとインパクトでフェースが返り過ぎてしまい、ひっかけやフックの原因となるのです。
【重心距離の影響3】 飛距離
重心距離が長くなるほどフェースが返りにくくなるのは前述の通りですが、返りにくいフェースが返ってきた時には大きな衝突エネルギーを生み出します。その為、重心距離が長いほど飛距離が出やすいと言えます。
重心距離以外全てが同じ条件のクラブで、同じプレーヤーが全く同じスイングをしたとすると、重心距離が1mm長くなるごとに飛距離も1ヤード伸びると言われています。
ドライバーがスライスしやすいのは長い重心距離が原因
重心距離とフェースの返りやすさの関係性をイメージしやすいのは風車と竹トンボです。
羽根の長い風車と羽根の短い竹トンボ、どちらが回転しやすいでしょうか? もちろん風車の方が重量も重いわけですが、仮に重量が同じだったとしても羽根の長い風車の方がはるかに回転しづらいことは想像できると思います。
クラブもこれと同じで基本的にはヘッドが大きいクラブほどフェースローテーションがしづらくなります。
ドライバーでスライスする人が多いのに、アイアンでスライスする人があまりいない原因の1つは、ドライバーの方がヘッドが大きく重心距離が長いからなのです。重心距離の長いドライバーは基本的にフェースが返りにくく、インパクトでフェースが開いて当たりやすいのです。特に最近は440cc超えの大型ドライバーが主流ですので、ますます重心距離が長くなり、フェースは返りづらくなっています。
一方、アイアンではスライスのミスがほとんど無く、逆にひっかけのミスが多いというのは重心距離が短く、フェースが返りやすいからです。ツアープロがピンを狙ったアイアンショットでボールを打ってフォローを取らない「ライン出し」をすることがありますが、これは過度なフェースローテーションを抑えることで左に引っ掛けるのを防いでいるのです。
まとめ
ゴルフ雑誌などでたまに「ドライバーからウェッジまで同じスイングをするのが理想」なんてことが書かれていたりしますが、私はそれは間違いだと思います。重心距離の違いだけでもクラブの特性が変わり、それに応じた正しいスイングも変わるからです。
ですからクラブの特性を正しく理解して、正しいスイングを身につけましょう。
以上、クラブヘッドの「重心距離」がショットに与える影響 でした!
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