シャフトの「キックポイント(調子)」とは?
「最も柔らかい部分」ではない!
キックポイント(調子)とは簡単に言えば、そのシャフトの中で最もしなりやすい部分のことを指します。
シャフトを手元、中間、先端の3つのパーツに分けて考えて、最もしなりやすい部分が手元なら手元調子(もしくは元調子)、中間なら中調子、先端なら先調子などと呼びます。シャフトのカタログを見ると英語表記がされている場合もありますが、その場合はHigh=手元調子、Middle=中調子、Low=先調子のことを指しています。
つまり、もし最も柔らかい部分をキックポイントとするのであれば、全てのシャフトは先調子ということになってしまうのです。ですから、柔らかい部分 = キックポイントなワケがないんですね。
キックポイントの正体
ではキックポイントの正体は一体何なのでしょうか?
その答えは下のグラフに表されています。このグラフは特性の異なる3つのシャフト(A〜C)の剛性分布を表しています。さて、これらは何が違うでしょうか?
中学校で習った数学を忘れていなければ分かりますね。そう、グラフの傾きです。
実はこのグラフの傾きがキックポイントを表しているのです。タネを明かしてしまえば、Aが元調子、Bが中調子、Cが先調子です。
それぞれについて詳しく解説してみましょう。
グラフの傾きが小さいAは、手元がより柔らかく、先端がより硬くなっています。この為、シャフト全体の中で相対的に手元が大きくしなります。つまり元調子ということになるのです。
グラフの傾きが中くらいのBは、全体的にほどほどの硬さです。するとシャフト全体が均一にしなるのですが、そうすると相対的に真ん中が大きくしなるのです。つまり中調子ということになります。
グラフの傾きが大きいCは、手元がより硬く、先端がより柔らかくなっています。この為、シャフト全体の中で相対的に先端が大きくしなります。つまり先調子ということになるのです。
このように、キックポイントというのは単にシャフトの柔らかい部分のことではなく、シャフト全体の中で相対的に大きくしなる部分のことを指しているのです。
キックポイントに明確な定義が無い問題
しかし全く同じシャフトなのに、ある雑誌では元調子と紹介され、他の雑誌では中調子として紹介されていたりします。ひどい時には同じ雑誌であるにも関わらず、前回は中調子と紹介していたシャフトを、今回は元調子と紹介していたりすることも割と頻繁にあります。
このシャフトを「先元調子」と言う人もいれば、「先調子」や「元調子」とだけ言う人もいます。そして、これらの呼び方について明確なルールが無いのです。
その為、キックポイントの分類はメーカー独自のルールや雑誌の担当記者の見解に任されることになります。すると同じシャフトでも異なるキックポイントになってしまうことがあり、私たちユーザーの混乱を招く原因となっているのです。
8分類でシャフトのタイプを見極める
ここまでの説明を通して、キックポイントだけでシャフトの特性を見極めるのはあまり理想的では無いということがお分かり頂けたかと思います。
なぜなら、シャフトの3箇所(手元・中間・先端)はそれぞれ働きが異なるからです(詳しくは後ほど)。
その為、当サイトではこの3箇所(手元・中間・先端)それぞれを「硬い・柔らかい」に分けることでシャフトを8タイプのしなり特性で分類して考えることを推奨しています。このシャフトの8タイプについては下記の記事で解説しています。
シャフトがしなるポイントは移動する
スイングの中で最大の力の差が生じ、シャフトが大きくしなる瞬間です。この時のしなりが後の大きなパワーを生み出します。
シャフトの先が走るのは必ずインパクト前後であって、切り返しで走ることはありません。それはこういう理由なのです。
3箇所のしなりの役割とそれに合うスイングタイプ
手元部分の硬さについて
トップから切り返しにかけて、しなり戻るのが手元部分です。前述の通り、切り返しではそれまでと逆方向にクラブを引き下ろすので、最も力が必要となります。この為、手元部分の最適な硬さはプレーヤーのヘッドスピードによって決まります。
ただし先ほど申し上げた通り、ヘッドスピードが速くても切り返しのタイミングが早いいわゆる「タメが無い」人は手元が柔らかめのシャフトを使うことでタイミングが取りやすくなることもあります。
中間部分の硬さについて
ダウンスイング中にしなり戻るのが中間部分です。溜めてきたシャフトのしなりがリリースされる直前であり、しなり戻るタイミングに影響を受けます。この為、適したシャフトの硬さはプレーヤーのスイングリズムによって決まります。
先端部分の硬さについて
基本的に先端が硬いと打球は低く、つかまりにくくなり、逆に柔らかいと打球が高く、つかまりやすくなります。